株式会社フジテレビジョン様
フジテレビが、
コンテンツ管理、編成、送出を
フルクラウドで実現する
世界初のシステムを構築。
放送文化基金賞も受賞!
フルクラウドベースのシステムで、安定運用、
人的リソースのミニマム化、場所を問わない運用体制を実現。
正に「カバンに入る放送局」を具現化。
株式会社フジテレビジョンでは、NTTドコモのリニア配信チャンネル「dTVチャンネル」へのコンテンツ提供に際し、世界初となるフルクラウドベースのプレイアウトシステムを構築。コンテンツ管理から編成・送出まで一貫した対応を可能とした。
クラウドの特性を最大限に活かすことで、放送局が求めるクオリティを高いコストパフォーマンスで実現できる本システムは、放送文化基金賞を受賞するなど業界でも大きな話題となっている。
今後は、他の企業や自治体、団体などに対してもこの配信ソリューションの提供を計画しており、さらに将来的には、配信だけではなく、地上波など放送への一部応用も検討を開始している。
お客様紹介
株式会社フジテレビジョン
シニアマネージャー
関 克哉 氏
株式会社フジテレビジョン
総合事業局コンテンツ事業センター 部長職
永竹 里早 氏
株式会社フジテレビジョン
技術局IT推進センター 配信技術推進部
天本 光一 氏
株式会社フジテレビジョン
認定放送持株会社フジ・メディア・ホールディングスの一員として、テレビ放送に代表されるメディア・コンテンツビジネスを展開。昭和34年3月1日に放送を開始し、新設分割により平成20年10月1日新規設立となる。従業員数1,340名(2018年3月31日現在)。
〒137-8088 東京都港区台場二丁目4番8号
https://www.fujitv.co.jp/company/
導入の背景
新サービスの提供にあたり、コストや拡張性の面から
パブリッククラウドの使用が不可欠に
半世紀以上にわたり日本の民間放送の中核を担う、株式会社フジテレビジョン(以下、フジテレビ)。インターネットを使用した動画配信サービスが台頭する中、放送局という立場を活かしつつ、2014年3月には、日本初の24時間総合編成インターネット有料チャンネルである「フジテレビNEXT smart」をスタートするなど新たな取り組みを進めている。こんな中、新たに浮上したのが、NTTドコモのリニア配信チャンネル「dTVチャンネル」へのコンテンツ提供という案件だった。「プチフジ」と命名された同サービスでは、CS放送のバラエティを中心とした人気番組を提供することになった。しかし、従来の放送とは異なるリニア配信を実施するにあたって、プラットフォームなど検討すべき課題は少なくなかった。
当時の状況について、フジテレビシニアマネージャーの関克哉氏は、「プラットフォームについては、オンプレミス、ハイブリッド、そしてクラウドという選択肢がありました。今回は、全く新たなサービスということで損益分岐点も含めて不明部分が多いため、大きな初期投資は危険があると考えました。そこで、資産としてのハードウェアを持たず、また拡張性にも優れたパブリッククラウドを選択しました」と話す。
一方、放送局という立場で考えると、コンテンツの提供は、単純にデータを送出するというだけの対応には留まらない。フジテレビ技術局IT 推進センター配信技術推進部の天本光一氏は「放送局として求めるプレイアウトでは、単純に番組を送出するだけでなく、コンテンツ管理、戦略的な編成、そして送出という3 つのパーツが必要となります。しかし当時、クラウドベースでは一部の送出システムが存在するだけで、これら全てをカバーできる仕組みが無かったため、自ら開発することになりました」と話す。
こうして自社によるシステム開発を決定したフジテレビだったが、開発における狙いとしては、チャンネルの追加・廃止に対する柔軟かつ迅速な対応、シンプルな操作性の実現、設備投資やランニングコスト、さらに人的リソースのミニマム化によるコスト削減などが挙げられた。また、既存の放送用クラウドコンテンツサーバーとの連携によって、デジタイズやアップロードの作業負荷を軽減するという要件もシステム計画に盛り込まれた。
システム開発にあたっては、各ベンダーとの調整を含めたインテグレーションを担当する強力なパートナーが不可欠と考えた同社では、フジテレビNEXT smartの開発も含め、以前から継続的に協業してきた株式会社EVC(以下、EVC)に協力を打診。今回のプロジェクトについても支援を受けることを決定した。さらに、EVCが提供する動画配信システム「Bizlat」を導入し、編成システムとしてカスタマイズすることも決定した(現在は「編成・送出Bizlat」として製品化)。こうして2017年7月「クラウドプレイアウトシステム」開発プロジェクトがスタートした。
導入の経緯
放送における「あたりまえ」を機能として取り込み
より利便性の高いシステムを開発
開発作業の中では、フジテレビが設定した要件に従い、ベンダーへのカスタマイズ依頼が定常的に発生した。EVCの國分は、「複数のベンダーから今回の要件に対応できると評価した会社を選びましたが、実際のカスタマイズ工程では、どうしても遅延が発生します。そこで、こちら側がイニシアチブを取りながら、プロジェクトを推進しカスタマイズ作業を進める形になりました」と話す。
今回のシステム開発において特筆すべきは、クラウドという新たなプラットフォーム上で、従来の放送システムにおける提供機能、いわば”あたりまえなもの”として使用されている機能を実現している点だ。現場で実際にシステムを使用した、総合事業局コンテンツ事業センター コンテンツ事業室 部長職の永竹里早氏は、「日頃は編成の方を担当しており、開発プロジェクトには途中から参画しましたが、放送の編成で実現されている機能、効率良くできている機能は、絶対新システムでも実現して欲しいと思い、その旨を伝えました。これらに柔軟に対応頂いた結果が、今回の利便性の高いシステム実現に繋がったと感じています」と強調する。
こうしてわずか半年という短期間で、システム開発が完了する。一般的に考えても極めて短期での開発プロジェクトとなった状況について天本氏は、次のように話す。「通常、このような新しい技術を使った開発作業については、最初に実証実験等を行ってから実運用に入る形が多いと思います。しかし、今回は、すぐに本番運用を開始するという非常にスピーディなプロジェクトになりました。」新たな技術、マルチベンダー間の調整、放送局クオリティの機能実現などハードルの高いプロジェクトだったが、2018年1月末、無事にカットオーバーを迎えた。
導入のポイント
- パブリッククラウド上でコンテンツ管理から編成・送出まで一括対応
- 放送局同様のチャンネル操作を高いコストパフォーマンスで実現
- 送出機能「クラウドプレイアウトシステム」が放送文化基金賞を受賞
導入の効果
CS放送の運用管理と比較してほぼ50分の1の労力、
人的リソース、コストで実現
新たに開発された「クラウドプレイアウトシステム」は、EVCが提供する編成・送出Bizlatを介し、既存のサービス運用で使用される放送用クラウドコンテンツサーバーと連携することで、デジタイズやコンテンツアップロードにかかる作業時間を約10分の1に短縮している。また、編成・送出Bizlatを活用することで、ラテ欄のような入力画面を使ってシンプルで容易な編成情報入力を実現している。さらに、安定稼動を保証する機器の二重化やフレーム単位での機器制御、5秒CMに対応できる短尺サポートなど、従来のプレイアウトシステムでは成し得なかった「、放送局が求めるプレイアウト」を実現するものとなっている。
容易に操作できる編成情報入力画面新システムの優位性について、永竹氏は次のように強調する。「放送と配信という違いはありますが、人々にリニアで映像を届けていくという同じ目的について、CS放送の運用管理と比較してほぼ50分の1の労力、人的リソース、コストで実現できたという実感があります。具体的な話で言えば、現在のプチフジ運用チームは、わずか2名のスタッフで運用することができています。しかも定時には帰宅できるという、あたりまえの作業負荷でシステム運用が進められています。非常にコンパクトで生産性の高いシステムと言えます」
容易な操作性について天本氏は、従来のシステムとの対比という視点から「地上波のシステムは、今から20年ぐらい前に開発したシステムに手を入れながら運用しています。部署ごとに作られた全体で1000ページ以上にもおよぶシステムであったため、改変を含め大きな運用負荷がかかっていました。また、機能も多く煩雑なものになっており、運用機能習得に何年もかかりました。このため人事異動で担当者が替わる場合、引き継ぎに労力と時間がかかる事態も見られました。一方、今回のシステムは、最初からユーザーの要望を盛込んでおり、容易な操作で必要な機能を実現できます。たとえば、最近私の部署に入って来た新人に使わせてみたところ、2~3時間程度で運用できるようになりました。また、特に取扱い説明書を読まなくても直観的に使用することができました」と話す。
組織的な対応が不要になり、よりコンパクトな運用体制が実現できた点について、永竹氏は、「放送局で言う”準備室”にあたる機能が、事前にシステムに組み込まれているため、外部から届くテープを受け取り、ファイリングし、編成されている番組コードと合わせるといった作業が不要になりました。本システムでは、1人の担当者が映像をファイリングしてリニアのチャンネルを編成すると、自動的にそこに映像がリンクされるという仕組みになっています。多くの人手を要した作業が劇的に簡略化されています。」と話す。今後、放送の世界もデジタル化が加速すると予想させる状況下、今回のシステムは、このような大きな潮流を先取りした仕組みと言えるだろう。
導入効果・評価という話題の最後を締める形で関氏は、EVCへの高い評価に言及した。今回のシステム開発では、他社との調整を含めたシステムインテグレータという立場と編成・送出Bizlatを提供するベンダーとしての立場にあったEVCだが、関氏は「決してごまかさず、実現できることはできる、できないことはできないと言ってもらえる点が、信頼に繋がっています。今回の開発でも、ベンダーとの交渉の場も少なくありませんでしたが、弊社側の立場で調整を行ってもらいました。もちろん、映像システムに関する圧倒的な経験と実績については、非常に高く評価しています。」と語った。以前のシステム開発から継続的に協業している両社だが、この良好な関係が、最終的には短期間でのプロジェクト完了やシステム品質の向上に繋がっている。
今後の展開
今後はプレイアウトシステムの横展開も視野に、
両社の協業をさらに推進
新システムの開発・実運用が成功裏に完了したフジテレビだが、既にさらなる拡張にも着手している。関氏は「今回のシステム開発は無事に終了し、既に半年あまりの実運用を行っていますが、これで終りというわけではありません。これまでは予め制作してあった映像を使って編成・送出を行ってきましたが、これからはライブでのフィードも決まっており、タイムコードの設定などの作業を進めています」と話す。さらに同社では、クラウドならではの機能として、解析サービスなども含めた将来のシステム像についても検討を開始している。
さらに、システム+サービスとしての横展開もその視野に入っている。今回のシステム開発で、フルクラウドベースで放送局クオリティのプレイアウトを非常にリーズナブルなコストで実現できる正に「カバンに入る放送局」を具現化した同社だが、EVCと協業による新たな展開が可能となる。EVCの國分は「、私達はシステムについては開発できますが、番組を制作するというノウハウはありません。フジテレビ様と協業することで、制作から配信するまでのすべてをカバーできるようになります」と話します。
最後に関氏は「、EVCとの協業を通じて、番組配信における川上から川下までの形をほぼ揃えることができました。今後私達は放送局クオリティの配信専門パッケージを広く提供していければとも考えています」と近未来の抱負を語った。
※この事例は2018年6月時点の情報を元に構成しています。
TOPIC
世界初の「クラウドプレイアウトシステム」が
放送文化基金賞を受賞
第44回放送文化基金賞が6月6日(水)に発表され、フジテレビの「クラウドプレイアウトシステムの開発」が個人・グループ部門(放送技術)を受賞しました。
放送文化基金は、広く放送文化の発展に寄与することを目的として設立された民間の財団で、放送に関する調査・研究や事業に対する助成、制作者フォーラムの開催など人材育成の支援を行っています。「放送文化基金賞」は、過去1年間の放送の中から優れたテレビ、ラジオ番組や個人・グループに贈られる賞です。<中略>
クラウドでプレイアウトを行うシステムは日本で初めて、コンテンツ管理や編成のシステムまで含む広義のプレイアウトをクラウドで行うのは世界で初めてとなります。
フジテレビは、今後、他の企業や自治体、団体などにもこの配信ソリューションを提供することを検討しており、将来的には配信だけではなく、地上波など放送への一部応用も行えるものと考えています。